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「さくらんぼは、ぎまぐり。」 山形縦断記。

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過日、6月末の主力商品となるであろう、さくらんぼの産地を訪ねた。案内していただいたのは、(株)りょくけん生産部OBの奥山さん。8月末からの茶豆の生産をお願いしており、おじいさんを継いで(有)田和楽(=たわら)の経営を行っている。

羽田空港を7時に出る飛行機があったので、8時6分には、山形 庄内空港に着いた。奥山さんの車はスゴイ。黒のハイラックス。後ろは荷台になっており、きれいにフタがしてあった。車が好きなんだなーと思う。15分くらい車に揺られ、奥山さん宅に立ち寄った。茶豆の発芽状態を拝見させていただいたのと、『こごみ』を拝見した。最近はやっているらしく、良いらしい。「山菜は店頭ではあまり出ないんだよなー」と思いながら、ハウスの中にまたトンネル(=小さいビニールハウスみたいなもの)がしいてあり、遮光して作られている。シートをめくり、光を浴びた『こごみ』はなんだか神秘的だった。

次は尾花沢。内陸に位置し、文字通り、『スイカの名産地』。冷涼な気候が幸いし、全国でも一、二を競る大産地だ。今回は夏のスイカの栽培と取引をお願いしてきた。阿部さんは豪快かつ気持ちの良い方で、おいしさと安全性に気を配っている。くだもの農家さんでは珍しく、一箇所にかなり大きな畑があり、5ヘクタールの畑と5棟のハウスをお持ちだ。山に囲まれた盆地で、昼夜の気温差が大きく、良品が収穫できる。除草剤の不使用をお願いしたところ、「除草剤?う。そうかあ。」

新しい農家さんと交渉するとき、一番緊張するときだ。除草剤は、農薬の一種で、特定の草を枯らすことができ、農家さんの作業を大幅に軽減した。一方で土や当該作物の根を傷め、おいしさを損なうとも言われ、りょくけんでは一部作物を除いて使用を禁じている。使わない農家さんは使わないが、使用が一般化しており、これまで使っている農家さんに「使わないで」とお願いすると、抵抗される場合が多い。

abe.jpg 阿部さん。5ヘクタールを誇る阿部農園を背にして。

「やってみるべ。」 阿部さんが言ってくれた。「俺も除草剤をまいたら黄色く枯れでいくのを見て気持ちわりぃーど思っでだんだ。」

阿部さんのスイカは、小玉スイカならば早ければ6月末、大玉スイカは7月20日ごろからの出荷となる。

南にさらに下ってさくらんぼの農家さん;天野さんにお会いした。阿部さんもさることながら、天野さんは特徴が強い。着くなりいきなりさくらんぼ畑に案内され、おもむろにさくらんぼの枝を折った。そして東、北、南と順にその枝で差して「あっぢが仙台。あっぢが月山。そしであっぢが俺の畑のある方向。佐藤錦の生まれ故郷 東根(ひがしね)だ。」と説明してくれた。「え、じゃあ、この畑は天野さんのじゃないんですね?」「違う。これは他人の畑。」「え、じゃあ、枝折っちゃったらまずかったんじゃないですか?」「…。」 まさか、地理を案内するためだけに、あの枝は折ったのだろうか…?

天野さんの家に移動。奥さんが迎えてくれ、お茶をだしてくれた。一口もしていなかったが「じゃ、畑にいぐがぁ。」 「あ。ああ、ハイ…。」

山形県はさくらんぼの出荷第一位を誇る。だが、その出荷量の6~7割は贈答用(果物専門店やギフトカタログで見られる、きれいに敷き詰められた物)として発送され、それにもれた残りの3割程度が、パック詰めされ、店頭に並ぶ。贈答用とパック詰めでは天と地ほどの価格差がある。一口に山形といっても、かなり広く、したがって地理や気候条件もそれぞれ異なり、さくらんぼの適地とそうでない場所に分かれる。適地は限られ、そのトップに挙げられるのが、寒河江(さがえ)、天童(てんどう)、東根(ひがしね)だ。 さくらんぼはかなり天候に左右されるらしく、年によってはまったく実をつけないことがあるそうだ。このため、農家さんは積極的に摘果(=間引き)ができない。摘果しすぎて、実がならなかった場合、収穫がなくなってしまうからだ。ところが、この三大産地は気候と地理的条件が、さくらんぼに適しているため、とりあえず「ならない」ということがないのだそうだ。

天野さんはその三大産地のひとつ、東根の方。東根は、佐藤錦が開発された地域でもあり、山と平地が入り組んだ複雑な地形を持ち、それがさくらんぼに適している。だから、まず、「さくらんぼがならない」ということは無い。このため、天野さんは思い切った摘蕾が可能で、一節に12くらい着く花芽を、3つにしてしまう。普通にしていたら12個分の栄養になるものを3つに集中させる、だからおいしいものが出来るのだ。作物は自然のもの。だが、うまさを偶然の産物ではなく、必然化させる努力というがやっぱりされているのだ。

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上が天野さんのさくらんぼ。一節に三つずつ見事になっている。 下が他の農家さん。たわわになってはいるが…。

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「さくらんぼは、ぎまぐり、ぎまぐり、ぎまぐり。」と天野さんは言う。それだけ作りこんでも、年によってバラつきがある=さくらんぼは気まぐれなのだ、という。天野さんのさくらんぼの木にはひとつひとつプラスティックの板がかかっている。実は、これ、さくらんぼの通知表。果実の色目や、葉の変色の仕方、着果の具合など、7項目を、毎年5段階評価している。3や2が多く、5がほとんどない。この細かい管理もすばらしいと思ったが、5がほとんど見られないところに、天野さんの厳しさが推し量れる。

amano.jpg 笑顔で通知表を見せる天野さん。ちなみに大きな「5」の数字は木の番号で、成績はこの裏に記入されている。

「いだましぃ、いだましぃ、いだましぃ。」他の方の畑を見ながら、違いを説明してくれた。どうやら天野さんは3回繰り返すのがクセらしい。ちなみにいだましぃは「痛ましい」だ。

今年は、山形全体でさくらんぼが不作らしく、出荷量が5~7割だという。心配になって天野さんに電話すると、「そうらしいですねぇ。でもうちは良い感じに大粒のがけっこうなっているからねー」と奥さん。 さすがは名人。昨日、電話があり、今年は6月23日が初出荷となる見込みだ。翌日には届くから、店頭には24日から登場か。短期集中で10日間くらいしか収穫ができないので、入荷したら、ぜひお見逃し無く。

■さくらんぼ(佐藤錦) 1P 945円(税込)  6月24日~ @松屋銀座、伊勢丹新宿本店(6/26まで)、日本橋三越本店(6/26~7/1)

■小玉スイカ(マダーボール) 1玉1050円(税込) 6月末ごろ~

■大玉スイカ 1玉 2940円(税込) 7月20日ごろ~

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