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フルーツトマトの作り方

昨日、フルーツトマトには定義がない、と申し上げた。
極論を言えば、育て方で、どんな品種もフルーツトマト(=糖度7度以上のトマト)にできる。
※もちろん、向き不向きや作りやすさなどの差はある

いくつか方法はあるが、大別すると5つくらいに分かれると思う。
共通するのは、ハウス栽培であること。
天然の水分である”雨”が入らないようにするためだ。

りょくけんの主流は、最初に木をある程度育てて、4段目以降から水やりをやめ、だんだんと糖度を上げていく方法。
収穫し始めから1か月くらいは、木(=ツル)に栄養を与えるので、糖度は6度前後であまり上がってこないが、6か月ほど収穫し続けることができる利点がある。
サイズも大きい。
多くのフルーツトマトは、かなり小さいが、りょくけんのマルトマトはそれに比べかなり大きい。
北海道の6月後半のマルトマトは、2Lサイズでも糖度が8度を超えて実に美味しい。

二つ目は、土壌の塩害を逆に利用したパターン。
高知の徳谷トマトや、熊本の塩トマトがこれに当たる。
海だった場所を干拓したり、洪水などの害に遭って、土壌に塩分が残ってしまい、結果として根に水分を吸収する障害を持ってしまう。
小玉だが、糖度が顕著に上がる。
また、海のミネラルが加わって、味にも深みを与えている気がする。
今後、数年たつと、宮城の亘理あたりでも、同じ理屈でフルーツトマトができるようになると思う。

写真左にトマトのハウスがあり、堤防を挟んですぐ海が広がる(写真右)。熊本の塩トマトの産地。

三つ目は、農業資材を使うこと。
根域制限と言って、土の下にビニールシートを敷き、余計な水分が入らないようにする。
または、隔離栽培とか離床栽培と言って、土から離して、大型のプランタで栽培する方法。
静岡や長野で栽培されている「アメーラ」が代表的だ。
最近では、浸透圧の原理を利用した特殊なビニールを使い、かなり簡易に糖度を上げることができるようになっている。
Oisixが打ち出している「みつとまと」も、品種的には中玉だが、この一つの例だ。

高級メロンの栽培でも一般的な土から隔離して大型のプランタで栽培する方法。水分コントロールがしやすい。

四つ目は、肥料で味を作ること。
最近は、アミノ酸系の肥料を与えるのが流行っている。
魚の粉やそれを溶かした液肥が出ている。
うまみを助長するほか、糖度も上げるようである。
この方法だと、非常に肥料代がかさむ。
なお、植物の三栄養素=窒素、リン酸、カリウムのうち、リン酸が糖度を上げる大きな要素になる。
が、リン酸だけを与えてもうまく吸収されない。
この施肥のバランスやタイミングが、要は、農家の腕、技術となる訳だ。

石川の本田さん。自称「あまやかし栽培」。華小町という独特のミディトマトで、水やりと肥料分で食味を引き出す。

五つ目は、三段までしか収穫しない方法。
徹底的に水やりをコントロールし、制限する。離床にするのも有用だ。
木(=ツル)を育てるということはしないで、1段目から高い糖度のトマトを作ることができる。
3段目まで、すべて高糖度のトマト。
ただし、難だらけの栽培方法で、難しい。
トマトは大きくならない。すべて小玉だ。
木が短命なので、おおよそ1か月に一度苗を更新しなくてはいけない。
つまり種代がかかる。
植え替えのための人件費もかかる。
面積も広くなくてはいけない。

三段目で収穫を終えるので、枯れた木と生き生きした木が混在する。

連続して収穫しようとすると、次の作型を用意しておかなくてはいけないからだ。
悠長に、三段目を収穫して木を廃棄したら、次のタネを植える、なんてことはできないのだ。
次のトマトが取れるようになるまで、また1か月ほどかかってしまう。

私が思うに、5つ目のやり方の最大の利点は、天候に左右されにくい点だと思う。
1~4のやり方の場合、九州~本州の平地では収穫が春に集中する。
真夏は苦手だ。
植物が、どうしても、水分を欲しがり、糖度は落ちる。

そういった時期でも、5番目のやり方であれば、糖度が上がる可能性が高い。
高糖度のトマトを周年供給するためには、この5つのやり方のポートフォリオが必須なのだ。

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