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紀の川柿、開始。

「今年は、もうだめですわ。」

台風21号、台風24号と立て続けに日本列島と襲った頃。
和歌山県の紀の川柿の生産者 宇城さんに被害状況を確認。

南西に突き出た紀伊半島は、ごくごく頻繁に台風の通り道となり、甚大な被害を受ける。
今年も例外ではなかった。

「まだ電気も点きませんわ。」

宇城さんは、東日本大震災の時に、「水も食べるものでも送りましょっか?」と私どものことを心配してくださった。

それなのに宇城さんに、私は気の利いた言葉ひとつもかけられない。

「今年はもう、よそうかと思って。」

渋柿は、アルコールや炭酸ガスによって、渋が包まれて、人間の舌に感じさせなくさせる。
甘柿も同じ理屈で、自然と渋が成長過程で渋を感じさせなくなった柿だ。

一般市場では、渋柿は極めて安く、甘柿は2~3倍の価格で取引される。

そんな市場価値の低い種無しの渋柿である”刀根早生”や”平核無”を差別化のために樹上で渋抜きをするのが、紀の川柿である。

樹上になっているうちに、袋を一つ一つかけて、脱渋剤(炭酸ガス)を投入。
熟度が上がっていくのと同時に渋抜きが進むので、果肉が良い感じに仕上がり、渋が包まれる跡が黒くゴマのようになる。

黒ゴマの多い柿が美味しい、と言われるのは、渋が包まれ、目に見えるようになったためだ。

ただ、この袋かけの作業。

時期が決まっている。

その時期を逃すと、紀の川柿にならない。

「風であおられて、枝で道路がふさがれてしまって。柿畑まで上がれんのですわ。」

宇城さんのご自宅は山の中腹にある。
柿畑はその更に上にある。

台風のせいで、袋かけどころか、畑に到達できない、というのだから、ひどい。

「まあ、でもやれるだけやります。」

それから1ヶ月半。

紀の川柿の出荷が始まった。

「注文が多くて、そろそろ終わりが分かり始めたんで、連絡しようと思って。」

「え、じゃあ、刀根早生も切り替わって平核無ですか?」

“紀の川柿”は品種名ではない。
平核無や、そこから生まれた早生種”刀根早生”を樹上脱渋したものが、紀の川柿として出荷される。

もともとの品種である平核無(ひらたねなし)のほうが、しっとりしていて美味しい。

毎年、平核無に切り替わるのを待つのだが、今年に限っては仕込む量が絶対的に少なく、もう切り替わるとのこと。

電話の向こうの声が、忙しくて注文が多くて少し張りがあるのか、お元気そうだったので、少し嬉しかった。

何がともあれ、残りわずか。

黒ゴマたっぷり、災害に負けずに今年も出来た柿をお見逃しなく。

■紀の川柿 和歌山県産 約1kg(3玉前後)~ 1188円(税込)
https://www.shop-ryokuken.com/SHOP/44211.html

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