その出会いから、数回、2~3回くらい、直接、有元さんから電話で注文を受けた。
察するに、お料理教室に向けて、必要な野菜を取り揃えていたのだと思う。
お好きだったのは、ブロッコリーと玉ねぎ。
なかなかご注文に添えない時もあったが、銀座のお店と連携して、なんとか提供していた。
「大森さん?いつもお野菜ありがとう。ちゃんと宣伝してますからね。フフ。」とおっしゃっていたっけ。
しかし、あるときから注文が途絶えた。
心配になって調べてみると、有元さんはイタリアと東京を半年ずつくらい交互に暮らしているらしく、日本にはいなかった。
ほっとしたような、ほっとしないような。。。
それからしばらくして、その有元さんの孫弟子といって良い方がお店で働くようになった。
「自分は、有元さんの本を読んで、りょくけんを知りました。」という。
「え?」
後日、その方が、該当の本を持ってきてくださり、確かに、りょくけんの記述があった。
“美味しい野菜は、本当にそれだけで美味しい。りょくけんさんの野菜なんて本当に美味しい。料理教室に来ている生徒さんも美味しい美味しいといって残さず食べてくれます。
蒸したブロッコリーに、オリーブオイルをかけただけなんですけどね。”
という一文だった。
すごく嬉しかったのを覚えている。
その、孫弟子の方は、当時、料理ではなく、ジャズシンガーを志していた。
りょくけんで販売のバイトをしていたのだけれど、料理に触れて、逆にそちらへの興味がよみがえって、現在は、料理家として、NHKの番組にまで出演している。
有元さんが言っていた、感度の高い方の広がり、ってこういうことなのかな、とも思う。
「りょくけんさんが一番分かる、これっていうお惣菜はどれかしら?」
ふと、昔の話が、ふわーっと頭の中を駆け巡っていたが、お客様の二言目で、我に返った。
「そうですね、蒸しただけの、このスチームサラダも良いと思いますし、焼いたグリルも良いと思います。でも一番、売れているのは、バーニャカウダだから、やっぱりこちらでしょうか。」
あれから12年。
本当に、月日が経つのは早いものだ。