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さくらんぼ ジュノハート

エピローグ。

赤石さんに別れを告げて、再び小野さんの軽トラに乗り込み、尾上山の果樹園に向かった。

「赤石さん、お若い方でしたね。」

受粉樹の”香夏錦”の漢字を聞いたら、赤石さんは分からなかった。
どんな文字ですかねえなんて、何気に話したら

「去年、お父さんが亡くなっててね。あいつだけでやるのは初めてなんじゃないかな。りんごを頑張ってたから。」

ハッとして、赤石さんとの会話のやりとりひとつひとつに納得した。
小野さんが、師匠と言っていたのは、元来お父様で、察するに、亡くなってからは、少し足も遠のいていたのではないだろうか。

「え? あ~なるほど、、、僕、失礼なこと言ってなかったかなあ、大丈夫ですかねえ…。」
「大丈夫だ、また、(フォローを)言っとくよ。」

尾上山の畑に着くと、奥様二人が待ちかねたように「どうだった~?」とニコニコしながら私や小野さんに尋ねた。

「お~がっぱりなってたぞ~」
「え~???本当に???」

今年は、やませという、青森特有の吹きおろしの冷たい風の影響が強く、全体的に不作だと思っていたのだろう、小野さんの奥さんには、その答えは意外だったようだ。

ビーチパラソルの下のテーブルに腰掛け、私が習ってきたことを、だんなさんと一緒に伝えた。

「じゃあ、赤石さんとお取引できそう?」
「はい!でも、小野さんは?」
「うちは、良いの、最初から赤石さんをご紹介するつもりで来てもらったから。」
「ありがとうございます。でも、一緒に成長していきましょう。」
「そういえば、ジュノハートは一本の枝が接んであるだけだったな。」と小野さんの旦那さん。
「じゃあ、うちは、ジュノハートで頑張ろうかな。ね!」
「はい、そうしましょう!紅秀峰とジュノハートで!」

小野さんの奥さんは、肩の力が抜けていて、農家さんっぽくない。
聞けば、旦那さんとは10歳、年が離れている。

きっと大恋愛だったに違いない。

旦那さんに水を向けると、「じゃ、そろそろ行ぐか。」と、そこには触れず。

「そうですね、すみません、長居しました!私もそろそろお暇します。」
笑顔で見送られて、私も嬉しかった。

同じく青森の田澤さんが、さくらんぼの樹を切ってしまったのが二年前。
この別れと出会いがより良い次のステップになりますように。

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