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スイカ

答え合わせ。

ご自宅から、田村さんの軽トラにレンタカーでついて行く。

倉吉のインターチェンジからかなり南の内陸部に入ったと思っていたけれど、畑はさらに南。
そして、さらに山の中。
上り坂を上がっていき、少し下がり、また上がったところに、開けた場所があり、右にスイカ畑、左に梨畑があった。
山の緩やかな傾斜地にあり、標高の高いほうにビニールハウスが一棟、そこから低いほうに向かって、トンネルが8列。
そこからは、”なぜ美味しいのか?”の答え合わせ。
ずいぶん上がってきた、と思ったので、標高を測ってみると、205mと出た。
田村さんにとっても意外だったようで、「そんなにありますか!自宅のところが100mくらいなんで、、、そんなにあるかな??」
実は、もう一つの畑がさらに北にあって、標高が220m。
それ以上向こうにはスイカ畑はないらしく、倉吉で最南に位置するスイカ畑であることが分かった。
畑に入ると、あれだけ雨が降っていたのに、ぬかるみがなく、靴に土がつかない。
「水はけ、良いですね。」
「そうですね、排水は良いですね。ここ(=倉吉)にきて、水が抜けないなあ、って思ったことはないですね。」
見た目は真っ黒のいわゆる“黒ボク“で、関東でも、もっともよく見かける土の色。
でも、まったく排水が異なる。
土づくりをして、団粒構造を作って、という感じでもない。
鳥取の名峰、大山(だいせん)が噴火してできた火山灰の土壌だと言うが、下地が違うのかもしれない。
どうも関東平野の常識と違うみたいだ。
「鳥取では、指導が徹底していて、6節ごとに花が咲くんですが、その4番目の花に着果させます。ツル引きもけっこうな重労働ですし、ぐるぐる回っていくので、けっこうややこしい作業です。」
田村さんの話にうなづく。
「そこから4本の弦を伸ばして、着果させた2玉だけ残して、残りの2玉は間引きします。施肥設計がそうなのか、かなり大玉になりますね。2Lとかはほとんで出ないです。」
2Lと聞くと、大きく感じるかもしれないが、スイカの場合、けっこうコンパクトな部類に入る。
Lサイズは、正直小さい。
田村さんの場合、中心サイズは3~4L。
「そこは、実は迷いがあって、、、現代(いま)のお客様は、3Lとか4Lを送ると『大き過ぎる』って言われてしまって。でも、自分なんかが食べると、4Lとか大玉のほうが絶対美味しいんです。」
熊本の内田さんも、中心サイズは3L~4L。
「元上司は、指導をしていた方なんですが『メロンやスイカは大玉のほうが美味しい。』って言ってました。僕も大きいほうが美味しいと思います。みかんとかトマトは小さいほうが総じて甘いんですけど。』
同じウリ科のかぼちゃや冬瓜も、大きいほうが美味しい、と先輩が言っていたっけ。
察するに、そのサイズに作ろうとしている施肥設計と、環境なんだと思う。
その通りにすくすく育ったものは美味しく、それよりも小さく育ったものは、何かがうまくいっていない=だから美味しくない。
ただ、お客様の言葉も理解できる。
大きいと冷蔵庫に入らないし、家族構成もそんなに多くないから消化しきれない。
そこはジレンマかも知れない。
ちなみに、熊本の内田さんのように”一果どり”は分かりやすいけれど、いろいろな要素を加味すると、2果どりが理想的らしい。
これも先輩から教わったことだけれど、一果どりの場合、株間を狭くする。
2果どりにする場合、株間がそれよりも広く、同じ面積であれば、収穫する玉数はほぼ同じになる。
つまり一つのスイカに対する土の面積は、一果どりでも2果どりでも変わらない。
「この葉の色になったら収穫時ですね。」
青々と生い茂った葉の中で、一つ二つ、黄色っぽくなった葉がある。
これが収穫時期の目印になり、着果してから49から52日目になるとのこと。
「あ、あれはしないんですか?えっと、”着果棒”ていうか、、、」
「あ、しますします。僕は棒ではなくて、あるかな?あ、ここですね。クレパスでツルに色分けして塗ってます。これで、着果してからの日数を管理しています。」
中央のツルにうっすら黄色に着色された箇所がある。
大規模の産地では、拾いどりせず、一斉収穫するので、品質にばらつきが出る。
良い産地は、この着果日数の管理がしっかりしているのだ。
「葉の生い茂り方とか、スイカにどれくらい日が当たっているかとか、これこれ、これなんか僕は好きですね!」と田村さんが指をさす。
手前のスイカではなく、奥の二つのスイカを差している。
葉が3~4枚くらいスイカにおいかぶさっている。
むき出しになっているものは葉の光合成が少なくなるし、果実に日が当たらないと、果肉の赤みが薄くなるそうだ。
☑水はけが良い。
☑標高が高い=昼夜の気温差が大きくなり、昼に光合成した栄養分を夜に消費せずに済むため、甘くなりやすい。
☑一株二果。
なぜ、田村さんのスイカが美味しくなるのか、その答えが十分に分かる、そんな納得のいく圃場だった。

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