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佐久 炎舞

四男と長野出張8。

「そっか、おしっこか。良いよ、うちの畑だから。」

バイパスを渡ると、そこもりんご畑。
理路整然と、りんごの樹が並んでいる。

その脇に剪定した枝がまとまっているところがあったので、そこで用を足させていただいた。
相変わらずのへっぴり腰で、全然スムーズにできない。

おかげで、炎舞(えんぶ)という珍しいりんごに集中したいのに、なかなか気が入らない。
すっかり日も暮れて、暗闇の中、炎舞を見た。
一眼レフのカメラも、いったん車に置いてきてしまったため、スマートフォンで撮るしかなかった。

「お、マーチングバンドの音が聞こえてくるな。」
近くに学校があるようだ。
「今日もね、娘が練習に行ってるんだよね。東海大会があるらしくて。」

佐久は、新幹線の駅ができてからというもの、目覚ましい発展を遂げている。
埼玉や東京から近く、二時間強で佐久平の駅に着くことができる。
長野の中では雪も少ない方だ。
町の開発も進み、移住者も増え、年々人口が増えている。
このご時世、学校も増え続けているのだとか。

「炎舞はどのくらい収穫できるんですか?」
「300kgくらいかな。」
「え~譲ってください。」
「良いよ。どれくらいほしい?」

交渉成立。

「でもね、気を付けて。炎舞は赤くないこともあるから。でも、食味が良いから、こいつは残したんだ。」
「へえ~味が良いんですか?」
「良いね! 酸味はあるけどね。吉家さんがつくった赤い果肉のりんごの中では一番良いと思うよ。」
「へえ~」

炎舞はムーンルージュと同じ親を持つ。
すなわち、吉家さんが育種した赤肉品種”いろどり”に”ふじ”を掛け合わせたもの。
ムーンルージュは外皮が黄色だが、炎舞は外皮が濃い赤。
秋映やシナノホッペのような、濃厚な色を持つ。
パッと見たところ、これだけ濃い赤だから、中もすんなり赤くなりそうなものだけれど、と思うくらい。

蜜入りもする高食味赤肉りんご”炎舞”。
好きな漫画のキャラクターの必殺技をすぐに思い浮かべてしまう…。

しばらく話し込んだ後、配達を思い出した小林さんは急いで園地を離れた。

「僕もね、また販売の現場を見に行きたいんだけれども。販売している時は、こっちも収穫で忙しくて。。」
「そうですよね~ご無理なさらないでください。今日はお忙しい中、ありがとうございます!」
「いえいえ、こちらこそ。では、ここで。」

園地の近くにスマートインターがあり、旧知のお米の農家さんにも会いたかったけれど、すぐに高速道路に入り、佐久を離れた。
須坂までは3時間半かかったが、佐久は長野と群馬の県境にあり、東京にも近い。
サービスエリアで、四男待望のアイスクリームとそばを食べて、帰路に就いた。

充実した出張だった。

 

 

22時になるころ、自宅に着いた。
息子たちも、妻もまだ起きていた。
玄関の扉を開け、妻の顔が見えると、いきなり四男は大声で泣きだした。

「か~ちゃ~ん~」

まだまだ四歳。
朝から晩まで母親の顔が見られなかったのが寂しかったのだろう。

やれやれ、やっぱり母親にはかなわない。

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