2月に、長崎の馬渡さんの畑を、約束もなしに訪ねた。
馬渡さんは、他に担当者がいたから、実のところ、初めてお会いする農家さん。
とても気持ちの良い田んぼや畑が広がる中、緩やかな坂道を上がっていく途中に、大きな倉庫があり、カーナビゲーションによると、そこが、馬渡さんのご住所だった。
倉庫の外には、農家さんらしく、いろいろなものが散在していて、、、
中をのぞくと、じゃがいもやごぼう、にんじんに囲まれて、一際小さなご老人が(すみません)、ちょこんと座って、じゃがいもを袋詰めしていた。
「すみません~!」と少し叫びながら、ずかずかと中に入っていき、「すみません、りょくけんの大森です!」と自己紹介すると、ご老人が、「大森さん!? わざわざ東京から来てくれたの?」と言ってくださった。
「にんじんの畑はちょっと行けないんだ、もう。」
後から聞いて分かったことだが、この大きな倉庫を建てた時に、5mほど上の屋根から落下し背骨を折ってしまった。
そのため、あまり体の自由が利かず、車の運転もあまりしてはいけないのだそうだ。
「近くにある畑を見せるよ。」
倉庫の裏には、1町ほど赤土の畑があり、さつまいもが植えてあったそう。
絹さやが新たに植えてあり、ちょうど、芽が出たところだった。
「面白いんだよ~ 今からこれ、この竹を土にさして、絹さやのツルを誘引してあげるんだけど、こう差してもダメだし、こうでもダメ。こう差さなきゃいけないんだあ。」
と優しく教えてくださった。
馬渡さんは、化学合成された肥料や農薬を使わない。
その代わり、光合成菌という菌を培養して、土に撒いている。
大きな大きな、1t入るという巨大なバケツのような容器に、液体になっている光合成菌が入っていると言う。
開けて見せてくださったが、おおよそ、”衛生”というようなものとは程遠い、中身の色と臭いだった。
私の表情にそれが出てしまって察したのか、すぐに蓋を締めて、「そ、どぶの臭いだな。」と馬渡さん。
作り方や増やし方=培養の仕方も伺ったが、ここでは触れないでおく。
馬渡さんとは一回りは年齢差があるだろう、奥様も帰ってきて、私を見て、「大森さん!?」となんだか歓迎してくださった。
「いやあ、優しそうな話し方をする方だから、本当はどんな方なのかなあっていっつも気になっていたんです。」とのこと。
褒められている???
とりあえず喜んだ。
「私も、絶対、生きている間に、東京に行きますから。そしたら、絶対りょくけんさんのお店にお邪魔しますから!富士山も見たいですし!」
富士山は東京じゃないけれど、、、
雲仙普賢岳や、愛野の美しい長崎の風景もあるけれど、東京や富士山は不変の価値があるようだ。
ほわほわしながら、長崎空港に向かい、最終便の飛行機に乗りこみ、帰路に就いた。