「ピオーネはまだ酸っぱいし、今年は病気も多いし、ちょっと送れない。」
「あ、そうですか、、、」
「藤稔(ふじみのり)だけ今日は送るから!」
山梨の高橋さんから電話だった。
ふだんあまりしゃべらない印象の高橋さん。
昨年、お父様で、私が大好きだった家正さんが亡くなった。
家正さんは、とてもおしゃべりも好きだったし、客人が大好きで、訪問すれば、もちきれないほどのぶどうや桃を頂いたものだった。
ご子息の正孝さんは、あまりしゃべらない印象だったけれど、この日に限ってはやけに饒舌。
でも、考えてみれば、これが本当の正孝さんなのかもしれない、とも思った。
いつも、僕は家正さんとその奥様と話をしていたし、話をしていたかった気がする。
「今年はね、7月の雨が多くて、病気が次から次へと出てきていてね。特にピオーネはひどい。袋をとると、傷んでる玉が多くて…。しかも暑いから色がつかない。」
黒いぶどうは、寒さがくることで、黒く着色する。
気温が高いと、なかなか黒くならない。
だから、名産地と言われるような場所、例えば、同じ県内の勝沼は、標高が高く、夜温が低いので、ぶどうが着色しやすい。
一宮に属する高橋さんの畑は、扇状地のため、排水が抜群に良く、どんな雨の多い年でも、糖度がきちんとのる。
ただ、夜温は勝沼ほど下がりきらない盆地のため、やや着色が劣るのだ。
「あんな色のつかないぶどうなんて、本当に嫌だ!そういいながら作ってるんだけど…」と電話の向こうで高橋さんが言う。
「まあ、それでも、山梨県推奨の、色が付きやすい、っていう品種を今年は植えたから。まだ、ぶどうの顔も見ちゃいんけど、、、3年後、期待してて。」
山梨県がつくった新品種!
その名も、”ブラックキング”。
いかにも黒く、着色しそう。
ピオーネに、巨峰の枝変わり山梨46号というぶどうを掛け合わせたものらしい。
本当に最新で、昨年2018年2月に登録されたばかりで、まだ、市場に出回っていない。
巨峰からピオーネ、そして今度は?
黒ぶどうの横綱になりうる品種なのか、今から楽しみである。