「ここの野菜はなんでこんなに何でも美味しいの?」
店頭で、初老のがっしりした体躯を持つ男性客に質問を受けた。
私は初めての接客だったと思うが、何度もお越しになっている様子だった。
300gとか200gとか、かなり多くの容量で3つ4つ量り売りを依頼された後、「あ、バーニャカウダもあるんだ。これにしよう。」と結構な買い上げ量だった。
マスクはしているものの、ついついニコニコしてしまい、なんとお答えしようか少し考えた。
「収穫量を追わない、と言うか。要は肥料や水をたくさん与えれば、もっと収穫量を増やせるところを、あえて増やさない。600房取れるところを400房に抑えることで、凝縮させてます。」
そのようにお答えすると、腑に落ちてくださったようで、「なるほど、凝縮させるんだね。」
「はい。でもまあ、その分、少し多めにお支払いしなきゃなんですけど。」
「そりゃそうだ。」
商品をすべて入れて、袋をお渡しする際には、「それと、全員(の農家さんと)、ちゃんとお会いしてます。」
「へえ。」
それは、お客様にとっては意外だったようだった。
そして、それはとても感心しているようにも見え、私はなんだかとても満足だった。
そう、商品の、原料の確保には、結構努力しているつもりだ。