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中島 愛媛

カンコーコー。

「もう無理だよ!中島に行きたいの? カンコーコーに行けば間に合うよ!」
「カンコーコー?」
「松山観光港!タクシー捕まえて飛ばせば、間に合うから!」と係りのお兄さん。
「今からタクシーに乗っていけば、あの行ってしまったフェリーの、次の行先に間に合うって言うことですか?」
「飛ばせばね!」

タクシーは?

ーいない。

だが、タクシー会社の建物があったので、駆け込んだ。

「戻せば5分で来ますよ。お客さん、観光港に行きたいの? 何分発ですか?」
「10時30分発です!」
「ギリギリだな。今、タクシー呼び戻すんで。」と無線で一台呼んでくださった。

建物の外で待ち、途方に暮れている様子の私に、何人か声を掛けてくださった。
「中島行のフェリーは、もう昼過ぎにしかないんよ」などなど。

10時10分発のフェリーの次が、13時50分発であることは、よく知っている。。。

ただ、10時10分三津浜港発のフェリーを逃したとしても、次のフェリー寄港駅で挽回のチャンスがあるとは、ホント、私には知る由もない、地元の方や、係りの方ならではの情報だった。

冷静になって、中島汽船のルートを確認すると、松山側には三津浜港、松山観光港、高浜港と三つの港があり、フェリーの便によって、寄港したり寄港しなかったりもするが、どこかでそんな”挽回”のチャンスがあったようだ。

ただ、以前、私が電車を利用して中島に渡った時の港の景色と、なんだか違う。
駅から、一本の道を隔てただけで、港にはたどり着けたのを覚えているから、もしかすると今いる三津浜港とは他の港で、伊予鉄ではない、他の鉄道だったのかもしれない。
後で学習しよう。

そんな必死の形相をしていると、タクシーが悠然とやってきた。

「松山観光港までお願いします。すみません、10時30分発のフェリーに追いつきたいんです!間に合いますか!?」

運転手さんは静かに、「それは分かりませんが…。」と車を静かに出発させた。

でも、ポイントというポイントで、、、例えば車線変更で前へ出られれば出て、信号が黄色ならば、少し急いでくださって、、、
そのご尽力に、後部座席に座りながらも、いちいち感謝した。

車が進むうちに、見たことがある景色になった。

この道は車で走ったことがある。

アボカドや柑橘類をお世話になっている田那部さんたちの山の畑がある付近だったのだ。

トンネルを抜けて、いつもとは逆に左に曲がると、果たして松山観光港があった。
10時26分。

運転手さん、本当に有難うございます。

急いで切符を買い、波止場に向かうと、ちょうど、先ほどのフェリーが入ってくるところだった。
意気揚々とフェリーに乗り込み、階段を上った。

3階建てとも言うのか、大きなフェリーで、車も十数台乗り込むことができる。
客席も広く、ファミリーレストランのようなボックス席や、幼児が遊べるような、絨毯敷きのスペースも十分にあった。
屋上は、風を感じながら、外の景色を楽しめるスペースになっていた。

ひとまず、ほっとした。
これで、石丸さんとの約束の時間に、中島に辿り着くことができるのだ。

そう思いながら、ここにたどり着くまでに、一体いくらのお金を使ったんだろう?と深く反省した。